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『衣服哲学』 カーライル著

今更ではありますが、現在の私という人格に多大な影響を与えている著作を、ここで改めて紹介します。

トマス・カーライル著 『衣服哲学』                               本書はこの世に生きるあらゆる人格にとって、有益な書物であると確信します。

このような書物は非常にまれであり、CSルイスが語るところの「神話」に近づいた最高の「アレゴリー」の一つであると思う。すなわち著者であるカーライルは「彼がすでに知っていること」は勿論、彼が「まだ知らないこと、他の方法では知りえないこと」をもこの書の中に盛っていると、私は思うのです。

難点は入手し難いこと。
後は、翻訳が旧仮名遣いのものしか現存しないことだろうと思う。

実は私のプロフィールの「トイフェルスドレック」とは、この作品の主人公の名前から取っています。(トマス・カーライルの『衣服哲学』と出会い傾倒する。とコメントしている通りです。)

前振りが長くなりましたが、ここから本題に入ります。

著者のカーライルについてご存知でない方は、ウィキペディアを参照してみて下さい。(かなり迫力のある肖像が見られます。)

本書の原タイトルは『Sartor Resartus(サーター リザータス)』直訳すると「仕立て屋の仕立て直し」或いは「仕立て直された仕立て屋」となる。

本書の構成は非常にユニークであり、一見複雑です。
カーライルは英国人編集者としてドイツで発表された『衣服、その起源と影響』という論文を英国に紹介するという形式で、本書を著している。
そしてその論文の著者こそ、本書の主人公、法学博士ディオゲネス・トイフェルスドレックである。(ちなみにトイフェルスドレックは「悪魔の糞」という意味で有名な胃病薬の名前だとの事。日本で言えば「正露丸」のようなものだろうかと想像しています。ディオゲネスは、「神より生まれた」という意味ですが、有名なギリシャの哲学者の名とも一致しており、その「哲学者ディオゲネス」は犬儒学派に属し、プラトンをして「狂ったソクラテス」と言わしめた変人でした。)

本書の前半部分は、編集者による上記論文の批評・紹介となっており、後半部分は論文著者トイフェルスドレックの評伝の形式を取っている。

全体に渡って、その修辞学的な美しさというよりは面白さに引き込まれるが、何と言っても本書の特徴は、主人公トイフェルスドレックのキャラクターである。

この法学博士にして、詩人であり預言者トイフェルスドレックは、自らの人生の挫折と葛藤を通して「永遠の否定」から「無関心の中心」を通って「永遠の肯定」に至る。そして彼の思想は、この世界の歴史と文化を、隆盛と衰退を繰り返しつつも、滅びることのない「不死鳥」に譬え、その中で行なわれる一切に対して、愛と憐れみをもって肯定するに至っている。

本書の原タイトル「仕立て屋の仕立て直し」には多くの意味、解釈が許されると思うが、私としては、主人公トイフェルスドレックこそが、「仕立て直された仕立て屋」即ち、挫折と葛藤を通して、この世の全てを肯定する人格へと新しく創り返られた者であったのではないかと思う。

そして本書を開く幸いな読者は、主人公トイフェルスドレックと共に、「仕立て直された仕立て屋」として、新しい「生(レーベン)」を生きる者となるものと確信します。

Book
衣服哲学
著者 カーライル
販売元 岩波書店
定価(税込) ¥ 840

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コメント

 衣服哲学か、私の名前でYAHOOで検索していただければ、「衣服哲学を分かりやすく」で、私のホームページを見つけることができると思います。
 僭越ながら、先月これを訳し終えました。近々最終校正版をこれまでダウンロード希望された方に送る予定でいます。
 現代語訳は無いと思っていらっしゃるようですが、拙訳ですが、私が作りました。よろしかったらメール下さい。

投稿: 大山国男 | 2007年12月16日 (日) 02時11分

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