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ナルニア国ものがたり

これまでもC・S・ルイスの著作については度々触れてきたが、ここで改めて、ルイスによるファンタジー児童文学の最高傑作『ナルニア国ものがたり』を紹介したいと思う。

『ナルニア国ものがたり』は、その第一作である『ライオンと魔女』のディズニー製作(ウォルデン・メディア制作)による2006年春の映画公開に伴い、日本での知名度も一気に広がったが、それ以前より、ファンタジー児童文学の分野では、あらゆる意味に於いて他の追従を赦さない傑作として多くのファンを持つ傑作である。

作品の概要

『ナルニア国ものがたり』は、1950年から7年のあいだ、毎年一冊づつ、立て続けに出版された、「この地上ではないどこか」にある「ナルニア」という国を舞台とした、児童向けのファンタジーであり、その完結編である『さいごの戦い』は、1957年には、前年度にイギリスで出版されたもっともすぐれた児童文学として、カーネギー賞を受賞しています。 また『ナルニア国ものがたり』は、その一冊一冊が、どれを読んでも、それだけで一つのまとまったおもしろい「おはなし」になっているばかりでなく、七冊全てを通して読んでみますと、これが全体でまた一つのまとまりのある大きな物語として、全体が、「ナルニアのはじまりからおわりまで」を描いた、大きな河のように長大な長編ファンタジーとなっています。

その出版された順序は

  1. 『ライオンと魔女』("The Lion, the Witch and the Wardrobe")
  2. 『カスピアン王子のつのぶえ』("Prince Caspian")
  3. 『朝びらき丸 東の海へ』("The Voyage of the Dawn Treader")
  4. 『銀のいす』("The Silver Chair")
  5. 『馬と少年』("The Horse and His Boy")
  6. 『魔術師のおい』("The Magician's Nephew")
  7. 『さいごの戦い』("The Last Battle")

となり、ものがたりの時系列順には 

  1. 『魔術師のおい』(ナルニア建国)
  2. 『ライオンと魔女』(ピーター朝)
  3. 『馬と少年』(同上)
  4. 『カスピアン王子のつのぶえ』(テルマール朝)
  5. 『朝びらき丸 東の海へ』(カスピアン朝)
  6. 『銀のいす』(同上)
  7. 『さいごの戦い』(チリアン朝 ナルニア滅亡)

となります。

多くの読者の同意を得られることと思いますが、『ナルニア国ものがたり』をはじめて読む場合には、出版順に読む方が楽しんで読めると思います。そうすることにより読者は、出版当時の読者(イギリスのこどもたち)がそうであったように、巻を追うごとに「ナルニアのなぞ」に答えを与えられてゆき、最後に『さいごの戦い』を読み終えたとき、ナルニアという一つの世界の「はじまりからおわり」までを疑似体験し、その「向こう側」にあるものの希望に行き着くことができるでしょう。そして、今度は自分のお気に入りの順に、「ものがたり」を読み返すことでしょう。

日本語版の訳者である瀬田貞二さんは「七つの物語を通して、ナルニアとは、人間のなかにある永遠の善と悪の戦いによせた象徴」であると述べて後「けれども、この作者は、どの行にもそんなつまらない種あかしやお説教をのべずに、ただひたすらに楽しく美しく、ふしぎに劇的に、空想のお話をじゅんじゅんとみずから楽しんで語りつづけている」と述べています。

そして作者であるルイス本人は、子どもの本を書く自分の目的は、「子どものための物語こそ、私がいわなければならない事がらにとって、最良の芸術形式だから。」と語り、一面、「私は、じぶんが読みたがるような本を、じぶんで書いたのです。私がものを書く理由は、いつもそこにあります。ひとが、私の読みたい本を書いてくれないから。私がみずから書かなければならないのです。」とも語っている。

次に、なんとしても語らなければならないのは「アスラン」についてである。

アスランは「偉大なるライオン」東海の果ての大帝の息子にして、ナルニアの創造主。その知知恵と裁きは偉大にして公平である。

この「ものがたり」の中心にはある「経験」があり、その「経験」こそが、この「ものがたり」の最大の魅力である「何ともいえない感動と憧れ」そして「歓び」の源泉であります。その「経験」とは「アスランと出会い」です。「ものがたり」の中心には、いつもアスランがいて、そのアスランとの出会いに、あるいはアスランとともにある歓びに向かってストーリーが進行しているのです。そして読者は、主人公たちと共に、正にアスランに出会うのです。

アスランきたれば、あやまち正され、アスラン吼(ほ)ゆれば、かなしみ消ゆる。

きばが光れば、冬が死にたえ、たてがみふるえば、春たちもどる。

ルイスは『キリスト教の精髄』のなかで、「もしもわたしが自分のうちに、この世のどんな経験も満足させることのできないあこがれがあることに気づくとしたら、それはわたしがべつの世界のためにつくられたということを物語っているのではないでしょうか」と述べています。またオクスフォード大学のチャペルの礼拝説教のなかで「まことの故郷にたいする、わたしたちのあこがれ、いま切りはなされていると感じている、宇宙の何ものかとふたたびいっしょになりたいという気持ち、つねに外側から眺めてきた扉の内側に入りたいという思いこそ、わたしたち人間の本当のありかたをたしかに指し示しているものなのです」と語っています。

ルイスが『ナルニア国ものがたり』で書きたかったものは、この「あこがれ」なのです。

ライオンと魔女 ナルニア国ものがたり(1) Book ライオンと魔女 ナルニア国ものがたり(1)

著者:C.S.ルイス,瀬田 貞二,C.S. Lewis
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カスピアン王子のつのぶえ ナルニア国ものがたり (2) Book カスピアン王子のつのぶえ ナルニア国ものがたり (2)

著者:C.S. ルイス,C.S. Lewis
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朝びらき丸東の海へ ナルニア国ものがたり (3) Book 朝びらき丸東の海へ ナルニア国ものがたり (3)

著者:C.S. ルイス,C.S. Lewis
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魔術師のおい Book 魔術師のおい

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さいごの戦い Book さいごの戦い

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コメント

どうもひさしぶり。
盛況なようで。(*.*)

俺もルイスを立て続けに読んで感銘を受けたのでちょこっとご紹介。
ナルニア国物語を読むならば「子どもたちへの手紙」というタイトルの本がお勧め
内容は実際にルイスと読者である子どもたちとの手紙のやりとりをまとめたもの。
そのやりとりの中にナルニア国物語のEpisodeが記されています。
ルイスの人格性にも触れられるのも良い。

HPのタイトルにも使われていますが「影の国にわかれをつげて」
これはまさしくルイスがどうしてOxford大学の教員を辞めて児童文学を書くようになったのか、児童文学を書くことへの真意を徒然と語っています。
この本と「さいごの戦い」を比較して読むとよりCSルイスワールドへのリアリティがありありと伝わってくるでしょう。

投稿: NoB' | 2007年8月 2日 (木) 01時57分

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