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根が切られない限り~seriousな庭師の知恵~

根が切られない限り

常に庭では心配ありません

庭では、成長には季節があります

春が来て夏が

そして秋が来て冬が来ます

しかしまた春と夏が来ます

以上は昨日紹介した1979年のアメリカ映画『チャンス』の中の主人公チャンスの台詞の抜粋である。

チャンスは、数十年間の人生を「庭師」として、雇い人の家から一歩も出ずに過ごした男である。

その事情を知るものは彼を愚か者だと思っている。

しかし物語中、不思議な出会いと多くの誤解から、チャンスはこの言葉を経済対策に悩むアメリカ合衆国大統領に語ったのである。

大統領はこの言葉を経済についての隠喩であると理解し、感動と共感を示し、翌日の演説の中でチャンシー・ガーディナーという誤解されたチャンスの名前とともに引用する。

これがきっかけでチャンシー・ガーディナー(チャンス)の名はアメリカ中に知れ渡ることとなり人気トーク番組に副大統領の代役としてゲスト出演することとなる。

その場でもチャンスは「庭師」としての経験から、庭の管理の話をして司会者や視聴者の共感を呼ぶ。

司会者に「あなたはどんな庭師ですか?」と訪ねられたチャンスはこう答える。

「まじめな庭師です。」

このところで「まじめ」と訳された言葉は英語の「serious」であった。

この「serious」という言葉は単に「まじめ」であるということ以上の意味を持っていると私は考える。

私はここで、E.H.ピーターソンの『牧会者の神学』の序文の一節を紹介したい。

「ある定義によれば、「専門家 professional」とは、人々の好みに迎合することなく、また人々が支払う代償によっても態度を変えることなく、その専門領域の全体と実践に関わる存在のことである」

「庭師」としてのチャンスは、まさにこのような意味で「専門家 professional」であったと私は考える。

すなわち「serious」とはこのような意味での「専門家 professional」のその職に向かう態度であるといえよう。

このような意味での「serious」とは「真剣」ということであり、この「真剣」とは、キェルケゴールが『死に至る病』の序文で「キリスト教的な認識」とその「配慮」について示した「真剣」さと同質のものであると私は考える。

作品中はっきりとは語られないが、チャンスは恐らく知的障害を持っていた。

そのチャンスが物心ついた時から、自分に任されていた唯一の仕事に「真剣(serious)」に取り組んだ結果、彼はそこから「知恵」を得たのである。

そしてその「知恵」は、それを聞いた誰もが「希望」を見出すような種類の「知恵」であった。

そして作品中の人物たちはこの「知恵」の言葉に経済的な「希望」を見出した。

チャンスが語ったような種類の「知恵」とは真に普遍的なものであり、あらゆる問題に適応できるものである。

時としてこのような種類の「知恵」は「真理」と呼ばれる。

私は地上に存在する全ての職業人が本当の「専門家 professional」として「真剣(serious)」にその職に取り組むならば、このような「真理」を発見するのではないかと考える。

それゆえトマス・カーライルは「衣服哲学」において「汝の最も手近に横たわる義務を果たせ。」と我々に命じているのであろう。

なんとなれば、その職に「真剣(serious)」に取り組むことは「専門家 professional」にとって「最も手近に横たわる義務」であるから。

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コメント

素晴らしいブログを読ませていただきありがとうございます。
これからも更新頑張ってください。

投稿: 新潟の出会いに | 2010年1月27日 (水) 16時45分

新潟の出会いさん

励ましのお言葉ありがとうございます。
これからも気の向くままに更新させて頂きますので
宜しくお願いします。

投稿: トイフェルスドレック | 2010年1月27日 (水) 23時31分

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